神奈川県立音楽堂 室内オペラ・プロジェクト
神奈川県立音楽堂は、1年間の改修休館を経て2019年リニューアルオープンした際、それまでの歴史、ホールの個性、未来を見据えて、《音楽堂室内オペラ・プロジェクト》と題し、新しいプロジェクトをスタートしました。
日本で最も古い公立音楽専用ホールとして1954年に開館した神奈川県立音楽堂は、小型ながらオーケストラピットも備え、音楽にまつわる全ての役割を果たすことを期待されていました。 その期待のほどは、音楽堂開館に先立ち視察をした近衛秀麿氏が「本格的なオペラ上演には小さすぎる」と苦言を呈したという当時の新聞記事からもうかがえます。 その後東京文化会館をはじめ大型の劇場が次々と建設され、首都圏だけでなく全国でもオペラ上演が活況を呈している今では笑い話のようなエピソードですが、そうなるまでの間、神奈川県立音楽堂はその黎明期にオペラ、演劇、バレエなど様々な上演の舞台となってきたのです。
2004年の開館50周年を迎えたとき、音楽堂はその歴史に再び光を当て、「音楽堂ルネッサンス」と題して、若杉弘指揮東京室内歌劇場による「パイジェッロ:美しい水車小屋の娘」、ファビオ・ビオンディ指揮エウローパ・ガランテ演奏による「ヴィヴァルディ:バヤゼット」を上演。全国から音楽ファンが集まる興奮の渦を巻き起こし、チケットは発売早々に完売しました。 2008年には古楽アンサンブル・アントネッロによるモンテヴェルディ作曲「オルフェオ」も好評を博し、さらに開館60周年を機に再び来日したファビオ・ビオンディ指揮エウローパ・ガランテによる「ヴィヴァルディ:メッセニアの神託」では、演出に彌勒忠史を起用し、限られた舞台空間を生かし音楽を引き立てるシンプルな舞台演出が絶賛を浴び、音楽専門誌や新聞紙上の国内上演を振り返るランキング記事では「その年のベスト・オペラ」との評価を得、『音楽堂バロック・オペラ』は1つのブランドとなりました。
開館65周年を迎える2019年から始まる新時代には、バロックに限らず、ルネサンス期から現代まで、「オペラ」から「ムジークテアター」、ワークインプログレスからフルステージまで、時代、国境、スタイルを超え、室内楽の楽しさを極限まで味わい尽くす、様々な上演に挑んでゆきます。 「木のホール」の親密な空間で、文学、演劇、舞踊、美術、ファッション、と、さまざまなアートのジャンルと音楽が交信してなりたつ舞台は、室内楽の可能性と広がりを感じさせるでしょう。
リニューアルした音楽堂で展開される室内オペラプロジェクト、ぜひ室内楽とオペラの醍醐味を心ゆくまでご堪能ください!